コラム|暮らしのデザイン
2000年前の暮らしを学ぶ。「あいち朝日遺跡ミュージアム」へお出かけ
2021/04/26
2020年11月、愛知県清須市にオープンした「あいち朝日遺跡ミュージアム」は、弥生時代の生活様式や人々の暮らしなどを体験しながら学べる施設。
教科書では学べない、当時の生き生きとした営みを感じてみませんか。
狩猟から稲作・農耕の時代へ。
道具を通じて知る当時の暮らし方
清洲城があることでも有名な清須市。
およそ2000年前、今の清洲JCTあたりに大きな集落があったことは意外と知られていないかもしれません。
清須市から名古屋市西区にわたり続く朝日遺跡からは、巨大な墓や住居跡が多数見つかり、この時代の人々の生活や集落の盛衰を知ることのできる貴重な資料として保存されています。
膨大な量の出土品のうち2028点が重要文化財に指定され、そのうち300~400点ほどが展示されています。
出土品の数々から、獲物を狩る生活から自分で稲作や農耕をして過ごしたり、石や木、銅や土などを加工してさまざまな生活用品を作っていたことが伺えました。
基本展示室1では、中心にある円形のモニターでそんな当時の生活の様子をアニメーションで見ることができます。
細部まで工夫が凝らされたジオラマでは、川で漁をしたり木を切って道具を作ったりする姿をリアルに再現。
大規模な集落で、勢力とともに土地を拡大しながら7~800年ほど存続したのだそうです。
この辺りはかつて海が近く、弥生時代には関西や日本海側、東北地方など各地から材料や人の往来があったのだとか。
こうした、人やモノのやりとりを繰り返し、集落を大きくしていったのですね。
弥生時代の土器を一同に集めた展示もあります。
前期~後期にかけてまんべんなく、これだけの量が見つかるのも朝日遺跡ならでは。
縄の網目を押し付けて文様をつける縄文式土器に比べて、貝殻や木の棒を使って独特な模様をつけているのが、弥生土器の特徴です。
職人によって好きなデザインが違ったり、模様の付け方にもこだわりがあったりと、見ているだけでも面白い!
注目したいのは、中期によく作られていたという「円窓付土器」。
副葬品として使用された痕跡があるようですが、何のために丸い穴をあけたのか、なぜこの形状にしたのかは詳しくは解明されていないのだとか。
弥生時代後期に流行した、ベンガラが塗布された赤彩土器にもそれぞれの装飾が見られます。
当時も職人が腕を競い合ったり、流行りのデザインを生み出したりしていたのでしょうか。
続く基本展示室2では、日用品としての道具や装飾品、祈りのための宝飾品などが展示されています。
物流や人の流れが盛んだったことを裏付けるように、朝日遺跡からは、動物のツノや牙、石や木、鉄や胴などの金属など、実に多様な素材が出土されています。
目的によって素材を使い分けていたこともわかり、当時の生活レベルの高さを知ることができます。
木製品がこの状態の良さで残っているのも、土地の地下水位が高かったおかげなのだとか。
道具一つを見ても現在に通じるところがあり、不思議なロマンを感じますね。
体験を通じて生活の豊かさを感じる
さまざまな体験ができるのもこの施設の魅力。
室内では、粘土を使った勾玉づくりや本格的な土器づくりなどが体験できます。
勾玉は、綺麗な色の粘土を好きな形に整えて作ります。
穴を開けてネックレスやブレスレットにするとかわいいですね!
土器づくりは、粘土の状態からしっかり手でこねて整形していくので、出来上がるまでに1時間~1時間半をみておくと◎。
こちらは子どもだけでなく大人にもおすすめの体験です。
当時の作り方と同じように、貝殻を使って好きな模様をつけてみましょう!
(土器づくり体験のテーマは月替りとなります。)
外では火起こしを体験できます。
「マイギリ式」といって、弥生時代にはないやり方ですが、キャンプやアウトドア好きな人なら一度は見たり体験したしたことがあるかもしれませんね!
まずは穴の開いた木に火起こし器をセット。
両側の糸を支柱にくるくると巻き上げたら、あとはハンドル状の持ち手部分をリズミカルに上下させます!
すると支柱が勢いよく回転し、穴の開いた木との間の摩擦により火が起こる、という仕組みです。
木が削れて赤くなってきたら成功!これが「火種」のもとです。
「この後は麻などに移して火種を作り、それを使って木や薪などに着火させるんですよ」とスタッフさん。
昔の人の知恵や労力を思うと、火を起こすだけでもとても大変な作業だったことが分かりますね。
参加すると、かわいいイメージキャラクター付きのオリジナル缶バッチがもらえます!
次に、学芸員でもあり、「あいち朝日遺跡ミュージアム」の立ち上げに携わったという原田幹さんにお話を伺いました。
原田さんいわく、朝日遺跡は集落の規模としても大きく「弥生時代の名古屋」のような場所だったのだとか。
「とにかくモノづくりに優れた集落だったということが、出土品を見ても分かります。
海に近い土地だったため東西から交易があり、なかなか手に入らないような素材や人がたくさん入ってきました。
まさに生産と流通の拠点だったのです。
また列島のほぼ中心にあることから、大陸の技術が伝わった西側の文化と、縄文の名残が残る東側の、両方のいいところを得て独自の文化を形成していました。
そういった点でも、現在の名古屋の文化と似ていますね」と話してくれました。
弥生時代の生活や文化は、実は現代の日本のあり方にとても近かったのですね。
また、「あいち朝日遺跡ミュージアム」には、敷地内に高床倉庫や竪穴住居などが復元されています。
公園には貝塚や環濠(貝殻などを捨てたゴミ箱のような場所)も残されており、弥生時代の生活をよりリアルに感じることができます。
さらにこの施設では、出土品や資料を展示するだけでなく、実際に弥生時代の暮らしを再現しようという「ムラづくりプロジェクト」が始動しています。
田んぼを耕して稲を植え、なんとその稲を当時のように石包丁で刈り取るそうです。
その稲を脱穀し、高床倉庫に保管するところまで、しっかり当時を再現しているというから驚きです。
「朝日遺跡はとても大きな集落でしたが、元をたどれば最初は小さなムラでした。
そこから人々が暮らしを作っていったのです。
現代に生きる私たちも、同じようにこの場所で『令和のムラづくり』ができたらいいですね」と原田さん。
今後もボランティアを募り、みんなで体験できるムラづくりイベントを企画しているのだそうです。
土地とのつながりを感じ、昔の生活を知ることで、今の暮らしを考えるきっかけにしたいですね。
[ 施設情報 ]
施設名:あいち朝日遺跡ミュージアム
所在:愛知県清須市朝日貝塚1
電話番号:052-409-1467
営業時間:9:30~17:00
定休日:月曜(祝休日の場合、翌平日)、年末年始
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